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大フォーラム2022
集会決議

 「骨格提言をお蔵入りにさせてはならない」。

 これは、亡くなられた大フォーラムメンバーの金子和弘さんが、数年前に大フォーラムの集会で語った言葉です。

 国連障害者権利条約を具現化するためには、骨格提言が欠かせません。しかし、いまの政府は、権利条約に基づいて出された総括所見を軽視するかたちで、明確な意思をもち、骨格提言を蔵に入れて世の中から消そうとしています。

 今年8月、日本はしょうがいしゃ福祉に関して、国連の障害者権利委員会の審査を受けました。いまのしょうがいしゃ福祉が政策として条約に適合しているかを検討する審査であり、権利委員会は日本政府、市民団体と対話しながら検討。9月9日にはその検討結果である総括所見を公表しました。総括所見は日本のしょうがいしゃ政策の通知表です。

 

ところが、永岡文部科学大臣がその4日後、総括所見が求めた制度改善を拒否する見解を示し、9月16日には、加藤厚生労働大臣が「総括所見には拘束力がない」との見解を示しました。政府は総括所見を無視しようとしています。

 それが鮮明になっているのは、10月14日に国会に上程されたしょうがいしゃ関連法案です。改正案には総括所見という言葉がありません。また、総括所見を踏まえると問題点は、複数ありますが、なかでも精神科医療に関することは許してはなりません。

法案では、市町村長同意による医療保護入院を行ないやすくしようとしています。総括所見では、強制入院を合法とする精神保健法や医療観察法など、障害を理由に人権制限を認める法令は廃止せよと強調しているのにもかかわらずです。法案は、総括所見の内容と真逆です。人権に関わる政策議論で、一部のサービス提供者側の利益に偏って沿うことはあってはならないのです。 

 さらに法案では、これまで法施行後3年目の見直しだったにも拘わらず、「5年後」と見直し時期を延長しており、2029年以降にしか見直しが行われません。次の国連の対日審査までに、総括所見の指摘事項を、まったく実行しない方針なのです。

 本集会では、権利条約に合っていない政策のなかで、当事者が苦悩する姿が多く語られました。

近年、施設やグループホームのしょうがいしゃ虐待事件が相次いで報道されています。どのようにすれば、虐待事件は無くせるのでしょうか。閉鎖的な空間でひとりの介護者が多数の利用者を介助する仕組みをやめていかない限り、しょうがいしゃ虐待は絶対に無くならないのです。

今年1月に精神科病棟の新型コロナウイルス感染症のクラスター感染が報道されましたが、これも施設の構造的な問題に取り組まない限りどの施設でも起ります。

8月にジュネーブで日本政府は障害者権利委員会に「日本の施設・グループホームは桜があり花見もできる」と述べました。しかし施設問題は、花見ができる・できないかではなく、いのちの問題です。政府は、総括所見で述べられているように、すべてのしょうがいしゃの地域生活に責任をもつ立場に転換し、施設にいるしょうがいしゃとともに、地域での生活を実現すべきです。

 制度の谷間の問題においても事態は深刻です。東京地方裁判所は7月、Ⅰ型糖尿病障害者年金不支給訴訟で、原告の主張を認めました。つまり、原告の生活実態では年金が必要であるとしたのです。

しかし判決は、Ⅰ型糖尿病障害者の2級年金以上の基準を作っていない国の制度の問題などを批判してはいません。そのため国は、今回の敗訴を、例外的な年金支給として片付けようとしています。それは原告の思いと違います。原告は医学モデルに基づく支給決定の仕組みは間違っているとして裁判を起こしたのです。

障害者権利委員会の総括所見でも、医学モデルの脱却が強く言われています。

 骨格提言は、2011年に政府・しょうがい当事者・支援者が創った、誰も線引きしない福祉制度の構想です。

つまり、だれでも地域で暮らすのがあたりまえな社会。

これは権利条約に準拠しており、もし骨格提言が実現していれば、今回と全く違う総括所見が出てきたはず。次回の日本審査は5年後の2028年です。

皆さん、同じ轍は踏みたくないですよね。

そのためには、骨格提言の完全実現に向けた市民運動を広く続けることが欠かせません。大フォーラムは、お蔵に入りかけている骨格提言を、社会のど真ん中に出して、地域で暮らすのがあたりまえになる社会を強く求めていきます!

 

                                                       2022年11月6日

                                                       大フォーラム一同

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